大豆ミートハンバーガーが有名!インポッシブルフーズは地球を救えるか
代替肉市場が盛り上がっています。基本的に代替肉とは大豆たんぱくを使ったハンバーグなどの加工品を指し、近年では精肉として売られる代替肉も話題になっています。
そしてその代替肉市場を引っ張っているのがアメリカに本社のあるインポッシブルフーズです。インポッシブルフーズは、同企業ビヨンドミートに次ぐ大規模なスタートアップ企業であり、極めて本物の肉に近い人工肉を開発する企業として注目されています。
Contents
代替肉市場をリードする世界的企業
インポッシブルフーズ代表兼CEO パトリック・ブラウン
インポッシブルフーズは、アメリカ・カリフォルニア州で2011年に発足したたスタートアップ企業です。スタンフォード大学の教授が中心となり、家畜における肉が地球環境を滅ぼすと警鐘し、植物性代替肉を誕生させました。
私たちが何気なく口にしている畜肉は、思った以上に地球環境に影響を及ぼしています。牛や豚を育てるためには大量の水を必要とし、動物を育てるために多くの飼料や土地を必要とします。また牛のゲップはメタンガスを排出し、地球温暖化の原因になっていることも有名です。このまま畜肉中心の食生活はやがて地球が滅びてしまう、そのような危機感からインポッシブルフーズは誕生しました。
ビヨンドミートに次ぐ第二の植物性代替肉ブランド
インポッシブルフーズは代替肉市場をリードするスタートアップ企業ですが、アメリカではすでに「ビヨンドミート」という同企業が存在します。
ビヨンドミートはインポッシブルフーズより若干創設が早く、2009年に誕生しました。その後代替肉企業で世界初のナスダック上場を果たし、時価総額は1兆円にものぼります。
インポッシブルフーズはそれに次ぐ第二の植物性代替肉ブランドといわれています。しかしコロナ禍の影響もありビヨンドミートの売り上げが若干伸び悩んでいることから、だんだんその差は無くなっているようです。日本もはじめ、世界には多くの人工肉を扱う企業が増えています。それでも現在最先端の技術と実績を担うのは、やはりアメリカのビヨンドミートとインポッシブルフーズと言われています。
バーガーキング販売で一気に知名度が上がる
インポッシブルフーズが一気に知名度を上げたのは、バーガーキングで代替肉パテとして販売されたからです。バーガーキングは日本ではそれほど店舗数はありませんが、アメリカでは店舗数3位を誇る有名ハンバーガーチェーンです。そんなバーガーキングのメニューに代替肉が導入されたのは大きな話題になりました。
しかも、代替肉であるインポッシブルバーガーは、消費者の予想を上回る美味しさを実現し、大成功します。肉じゃないのに肉そのものの味がする、肉よりも健康的といった評価が話題となり、いまでは全米におけるバーガーキングのすべて店舗で代替肉が導入されているのです。
インポッシブルバーガーの成功
バーガーキングで発売されているインポッシブルバーガーは、通常のハンバーガーよりも値段が1ドル(およそ100円)高いです。それなのに、いまではインポッシブルバーガーの方が売れ行きが高く、バーガーキングの主力メニューとして君臨しています。
これはアメリカならではの健康問題と大きな関りがあります。アメリカはおよそ3人に1人が肥満といわれており、日本よりも多くの人が生活習慣病に悩まされています。その原因はハンバーガーを中心とした食生活であり、脂質や糖質を摂り過ぎてしまうからです。
体に悪いと分かってはいるものの、ファストフードをやめられないアメリカ人。そんなときに健康的な代替肉を使ったインポッシブルバーガーが誕生し、カロリーが抑えられるハンバーガーとして話題になりました。アメリカ人の食生活の弱点をついたインポッシブルバーガーは話題性を呼び、多くの人がその存在を知ることになりました。
インポッシブルフーズは何が違う?
インポッシブルフーズには多くの投資家からも支持され、著名人やハリウッドスターからの支援も受けています。ただ、それはビヨンドミートも同じであり、例えば世界的富豪であるビルゲイツや、有名俳優のレオナルド・ディカプリオも、インポッシブルフーズとビヨンドミート両方に投資をしています。そんなこともあり、両者は混同されることも多いです。そこでここからは、インポッシブルフーズはビヨンドミートに比べて何が違うのか、この会社ならではの特徴について見ていきましょう。
代替肉なのに肉汁!驚くべき技術開発
インポッシブルフーズの特徴は、研究に研究を重ね、これまでにはない代替肉を誕生させたことです。例えば動物の筋肉細胞には「ヘム」という血液を赤くし酸素を運搬する物質があり、これが肉汁となってステーキを切り分ける時に流れたりします。
植物性の代替肉にヘムを加えるのは困難といわれていましたが、インポッシブルフーズはマメ科植物のヘムを発見し、肉のような質感や肉汁を獲得することに成功しました。これによりインポッシブルフーズのハンバーグは、大豆由来のヘム鉄を合成させることで、よりリアルな質感や血液のような肉汁があると好評です。
肉の再現力はビヨンドミートより高い
インポッシブルフーズは大豆由来のヘム鉄を合成する、といった技術を駆使することにより、肉の再現力はビヨンドミートより高いと評価されています。
ただ、味に関しては「美味しいものの肉とは違う」といった意見も。BBCの記者が試しにインポッシブルバーガーを食べたところ「単純においしいが普通のハンバーガーとは違う味わい」と評価したそうです。
ただ、本物の牛肉ハンバーガーとは違う味であっても、それを上回る売れ行きがあるのも事実です。残念ながらまだ日本ではインポッシブルバーガーは発売されていません。いつか食べられる機会があったら、ぜひどのような味なのか確認してみたいですね。
スターバックスの朝食メニューにも参戦
インポッシブルフーズが戦略として挙げているのが外食市場をターゲットにしていることです。紹介している通り、バーガーキングでインポッシブルバーガーを販売したことがヒットとなり、いまではアメリカのスターバックスにおける朝食メニューで「インポッシブル・ブレックファスト・サンドイッチ」が販売されています。
またレストランにも積極的に働きかけており、昔は同社のパテを取り扱う店舗は40店しかなかったところ、2018年には3000店以上に増えています。ビヨンドミートがスーパーへの参入に力を入れたのに対し、インポッシブルフーズはファストフードやレストランにおいて同社の肉を導入し、直接多くの人にその味を知ってもらっているのが特徴です。
牛乳の代替品!?肉以外の技術開発も目が離せない
インポッシブルフーズという名前は、直訳すると「不可能な食品」。その名前の通り、同社はこれまで不可能といわれてきた食品を次々に開発してきました。
インポッシブルフーズ開発(予定も含む)食品
- 代替肉
- 植物性由来の牛乳
- 植物性で作られた魚介類
- 植物性由来の卵
牛乳や卵といった動物性食品に関しても、インポッシブルフーズはこれから植物性由来のものを生み出す研究開発に力を入れています。仮にそれらが商品化されたら、卵アレルギーや乳糖不耐症に悩んできた人たちにも大きな希望となるでしょう。
まとめ
バーガーキングをはじめとした、多くのレストランの肉料理に提供されているインポッシブルフーズ。いつか日本でも食べられる日が来るかもしれません。
人口爆発や地球環境悪化の懸念もあり、代替肉はこれからの世界を救うものとしても注目されています。インポッシブルフーズはそれを牽引する大企業ですが、このまま順風満帆に進むとは限りません。より安心で多くの人が楽しめる人工肉を開発するにはさらなる資金集めが必要であり、次々と参入している代替肉市場の激化に耐えられるかにも注目が集まっています。