肉よりも健康的な人工肉!?代替肉市場を牽引するビヨンドミートとは
環境破壊を考慮したり、健康志向が高まったりするなか、いま大豆ミートが話題になっています。大豆ミートはその名の通り大豆でできた肉であり、植物性たんぱく質が主な材料になっていることから、健康志向の高い日本人の間でも人気です。
そんな大豆ミートを牽引する企業として「ビヨンドミート」があります。日本での発売はいまだ未定ですが、アメリカにおける人工肉といえば、まっさきにこのビヨンドミートを思い浮かべる人が多いのです。今日はそんなビヨンドミートで開発されている人工肉について詳しく解説します。
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2009年創業 人工肉を牽引する大企業
ビヨンドミートは、2009年に創設されたアメリカのカリフォルニアにあるスタートアップ企業です。そもそもスタートアップとは、誰もが考えつかないアイデアを開拓し、市場で展開することから短期間で急成長する企業をいいます。
ビヨンドミートの場合、食料危機が叫ばれるなか、いち早く人工肉に注目した企業ともいえます。肉はこれまで牛や豚などの畜肉を食べるのが一般的でした。しかし地球の人口は近いうち100億人にのぼると言われており、圧倒的に動物性タンパク質は足りなくなるのです。そこで開発されたのはエンドウ豆や大豆などを主原料にして作られたフェイクミートです。動物の肉を使わずに作ったビヨンドミートは、100%植物性のプラントベーストミートといわれています。
時価総額はなんと1兆円、代替肉で世界初の上場
世界中でフェイクミートの需要が高まるなか、ビヨンドミートは2019年に企業価値およそ15億ドル(日本円で約15億円)で上場を果たします。これは代替肉企業で世界初のナスダック上場という快挙です。
また、世界の豚肉の4分の1は中国人の胃袋に入るといわれている現在、ビヨンドミートはその需要を見込んで中国工場を建設すると発表しました。これにより株価は急騰し、時価総額は約90億8000万ドル(およそ1兆円)に達しています。ドローンやAIロボットなど、今後の世界で活躍するアイテムはいろいろあるものの、代替肉も今後の世界で重要になるアイテムの1つといわれています。ビヨンドミートはまさにその先頭を走る企業といえるでしょう。
ビヨンドミートが手がける食品
ここからはビヨンドミートで作られている代替肉について詳しく見ていきましょう 。
そもそもビヨンドミートという言葉を直訳すると「肉を超えた肉」と言えます 。
基本的にビヨンドミートは牛肉の美味しさを追求した食品であり、えんどう豆のタンパク質を中心に作られています。牛肉本来がもつ脂のうまさは、ココナッツオイルや圧縮キャノーラ油、ひまわり油などが使われており、これが牛肉に似た脂のうまみとなっています。また牛肉の赤身をイメージするため、ビーツ(赤カブ)の色素が使われているという工夫も。こうして見た目も味も本物の牛肉に近いビヨンドミートは、次々に商品開発を進めています。
代表作は「ビヨンドバーガー」
ビヨンドミートの代表作といえばビヨンドバーガーです。ビヨンドバーガーはビヨンドミートのひき肉で作られたパテを挟んだハンバーガーであり、アメリカでは2枚のパテが挟まれたボリューム満点のハンバーガーがおよそ660円で売られています。
実はパテだけを食べるとまだ大豆臭さが分かり、一般的な牛肉のパテよりは美味しくないといった意見もあります。しかしこれをソースやマヨネーズで味付けし、レタスやトマトではさみ、ハンバーガー用のパンで挟めば、従来のハンバーガーとなんら変わらなくなるのです。そのためビヨンドバーガーの評価はおおむね高く、健康志向の高い人達が従来のハンバーガーからこちらのビヨンドバーガーに乗り換えている動きもあります。
精肉コーナーで売られている人工肉
ビヨンドミートはハンバーガーに加工されるだけでなく、本物の精肉のようにスーパーで売られたことも話題になりました。写真は精肉として売られているビヨンドミートですが、本物の肉となんら変わらないといえるでしょう。
これまでも本物の肉に寄せた代替肉の製品は多く売られていたのですが、どの商品も代替肉セクションとして販売され、見た目も味も大豆でできた肉、という存在でした。しかしビヨンドミートはその見た目や味もリアルミートに大変近いため、大豆ミートという取り扱いではなく、精肉コーナーに陳列されたのです。これにより、それまで大豆ミートや人工肉に興味のない人でも「ビヨンドミートなら食べてみよう」と関心を持つようになりました。
ソーセージやチキンも開発
ビヨンドミートが手がける食品はビヨンドバーガー以外にも以下のものがあります。
- ビヨンドソーセージ
- ビヨンドチキン
- ビヨンドビーフ
どの製品も本物のソーセージやチキンに似ており、見た目や味も満足という評価が多いです。
特にチキンに関しては、会社が設立した当初から鶏ささみ肉のようなチキンストリップを作るのに成功しており、味には定評があります。あの有名なケンタッキーフライドチキンでも、2019年に試験導入されています。これからも改良を進めつつ、今後はアメリカのすべてのケンタッキー店舗で代替肉のフライドチキンが販売される予定です。
ビヨンドミートの特徴と今後の課題
代替肉市場を牽引しているビヨンドミートですが、世界では次々に人工肉を開発するスタートアップ企業が登場し、設立当初よりは存在感が衰えているという意見もあります。
それでもマクドナルドとも提携してビヨンドミートサンドイッチを販売し、精肉ミートと並んでスーパーで販売された実績は、これまでにない代替肉として多いに存在感があります。ここからは、ビヨンドミートの特徴や今後の課題などについて見ていきましょう。
ヴィーガン実践者以外からも支持が高い
ビヨンドミートはヴィーガン対応食品です。しかしここまで市場が拡大したのは、ヴィーガン実践者以外の人からも受け入れられた、という背景があります。
これまでヴィーガン対応食品というと、大豆の味が強い大豆ミートや、オーツ麦などでできたグラノーラが主流でした。体に良いとは分かっていても、正直あまり美味しくないというイメージも強かったのです。
しかしビヨンドミートはヴィーガンが食べられる食品でありながら、見た目や味も肉に近い食品です。精肉売り場で売られたこともあり、ヴィーガンを実践していない人でも「一度は食べてみよう」という気になりました。そのうえでビヨンドバーガーが人気を得たこともあり、多くの人の支持を得ることができたのです。
カロリーはそこまで低くない!?
植物性のプラントベーストミートであるビヨンドミートは、一般的な肉よりも相当カロリーが低いのでは?と期待されました。
しかし牛肉の味を追求して多くの植物性オイルが使われていることもあり、実際にはそれほどカロリーが低いわけではありません。例えばハンバーガーに使われているビヨンドミートのパテはおよそ250㎉であり、これに対し牛肉のパテは290㎉です。植物性食品はカロリーが控えめという声もありますが、実際にはそれほど変わらないといえます。
また、味を美味しくするには多くの塩や調味料も必要であり、塩分摂取などを考えると劇的な健康効果は低いという意見もあります。ダイエットのために商品を利用してもらうには、今後も改良が必要でしょう。
まとめ
代替肉市場を牽引しているビヨンドミートは、今後も世界的に規模を拡大し、いずれ精肉を超えた存在になるともいわれています。代替肉は地球環境を保護するカギともいえ、投資者にはあのビルゲイツやレオナルド・ディカプリオなど、環境問題に力を注ぐ多くのセレブたちもサポートいています。
残念ながらビヨンドミートは2021年2月現在、まだ日本で購入することはできません。しかしマクドナルドと提携し、今後も多くの商品を開発することから、いずれ日本で口にできる日も近いでしょう。限りなく肉に近いビヨンドミート、今後もその動きに目が離せません。