日本人はもともとヴィーガンだった!日本の食生活とヴィーガンの関係
近年、日本人の食事が欧米化していることが問題になっています。パンやステーキ、カレーやシチューなど、気づけばカタカナで書く食事ばかり食べている人も多いのではないでしょうか。
しかし、こうした食生活が日本に浸透したのはここ最近のことです。日本人の食事をたどると、昔はヴィーガンともいえる菜食主義であったことが分かります。今日は日本人とヴィーガンの関係や、食文化の歴史について見ていきましょう。
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昔はヴィーガン食が当たり前だった日本人
現代の日本人の場合、他国のようにはっきりとした宗教を信仰している人は少ないといえます。しかし古来の日本人は穢れ(けがれ)や清め、禊(みそぎ)という概念があり、動物を食べることは穢れであるという感覚がありました。そのため日本は明治維新まではヴィーガンのような食生活を送っていました。基本的に肉を食べる事はせず、野菜やイネ科の作物を中心に菜食主義を続けてきたのです。
古代日本人はペスコベジタリアン
古来日本人の食文化がわかる紀元前3世紀頃に書かれた「魏志倭人伝」よると、当時食べられていた食物の内容がよく分かります。
当時の日本の食生活は「温暖で冬でも生野菜を食べている」「水に潜って貝や魚を取っている」といった記述があります。反対に牛や馬、羊やカササギといった動物に関する記述はありません 。
つまり古代の日本人は「雑穀や米を主食とし、新鮮な野菜を食べ、魚介類だけは食べるが畜肉は食べない」といったライフスタイルであることが分かります。これはベジタリアンのなかに分類されるペスコベジタリアンに当てはまります。
アジア諸国では唯一肉を食べない国だった
ちなみに同時期のアジア諸国では、家畜を飼って食べている国がたくさんありました。同時期の中国では豚や羊などを飼い、食肉として活用していました。
しかし日本では、珍獣や鳥の肉を食べると気力も衰え早死にしてしまうとされ、人々のなかで肉を食べることは禁忌だったのです。675年には天武天皇が肉食肉食禁止令も出しています。しかもこの肉食禁止令が解かれたのはなんと1200年後の明治維新の後です。こうみると、日本人が肉を食べるようになったのは、ごく最近であることがわかります。
肉を本格的に食べるようになったのはたった50年前
明治維新後の日本では、1200年間守られてきた肉食禁止令が解かれました。しかしそうは言っても、一般人が肉を食べるようになったのはもっと後の話です。特に海の近い沿岸部に住む人は、魚のタンパク源があったため肉を食べない人がほとんどでした。1980年頃までの漁村では、肉を1回も食べることなく生きてきた老人が多かったと言います。
日本で肉食が一般人にも広まり始めたのは1960年頃です。この頃一人当たりの肉の年間消費量はおよそ3.5 kg です。それが2013年頃には30 kg になり、ここ最近50年で、日本人の食卓には肉が当たり前のように並ぶようになりました。欧米化の食事が浸透したきたのは、まだ歴史が浅いことが分かります。
ヴィーガンだった日本人が肉を食べるようになると
いまでこそ当たり前のように肉を食べている日本人ですが、およそ1万3000年も続く日本人の歴史のなかで肉を頻繁に食べるようになったのはここ50年程度です。長い間ヴィーガンだった日本人が肉を食べることにより、さまざまな影響が懸念されています。
実は肉食に適していない?
日本人の腸は肉食に向いていない。これは昔からいわれてきた説です。過去にはある胃腸製薬会社の会長が次のような発言をし、日本人の胃腸はそもそも肉食に向いていないということを印象づけました。
日本人は7メートル、欧米人は4メートル。何の長さかおわかりですか? 実はこれ、腸の長さ。日本人の腸は穀類中心の食生活に適した長さに、欧米人の腸は肉類中心の食生活に適した長さになっているんです。
さまざまな研究結果が進んでいる現在、日本人の腸が長いという説は賛否両論あります。ただ自然界における動物を見ても、草食動物の腸は長く、肉食動物の腸が短いという特徴があります。こうしたことから日本人の胃腸はそもそも肉食には適していないという考えは根強いのです。
欧米化した食事のデメリット
肉の消費量が増えた日本では、それに伴い欧米化した食事が定番になりつつあります。しかし欧米化した食生活には次のようなデメリットがあります。
- エネルギー過多
- 肥満体形
- 野菜不足
- 生活習慣病のリスク
- 虫歯になりやすい
肉を中心に作る料理は、ハンバーグやステーキといったボリュームのあるメニューが多いです。これにより脂質やエネルギーの摂り過ぎにつながり、野菜を食べなくなるといったデメリットがあります。その結果生活習慣病が増え、高血圧症や糖尿病、女性ではエネルギー過多による乳がんリスクの懸念もいわれるようになりました。
もう一度ヴィーガンの食事と向き合おう
肉を食べ欧米の食生活になったことで、体が大きくなったり、多くのメニューを楽しめたりするようになりました。そのメリットは認めつつも、やはり健康のことを考えると、日本人はもう一度菜食と向き合う必要があります。
絶対に肉を食べるなとは言いませんが、日本人が大切にしてきた穀物中心の食事を、普段の生活にもう少し生かしてみてはどうでしょうか。それは健康につながるだけではなく、危機的状況にある地球環境を救うきっかけにもなります。
今後は肉が不足する世界になる
いまではスーパーに行けば当たり前のように肉が売っていますが、肉が無くなる日も近いかもしれません。
2050年には地球の人口は100億人近くなると言われており、圧倒的な食糧不足が懸念されています。いまある肉や魚では人類の食事を供給することができないのです。
また、地球環境の悪化により人類は滅亡するのでは?ともいわれています。その大きな要因である温暖化ですが、実は原因として畜産業があげられます。牛一頭を育てるためには広大な牧草地が必要であり、いまでは地球の肺といわれているアマゾンの熱帯雨林が畜産業のために破壊されているのです。人類が生き残るためには肉食や畜産業を見直す必要があります。
大豆が肉の代わりになる日も近い!?
将来の食糧不足を打破する方法として、いま「代替肉」が注目されています。その材料となるのが大豆です。大豆は日本人にとっても馴染みの深いものであり、味噌や納豆でもお馴染みです。
代替肉に関しては世界中の企業が研究を重ね、アメリカの大手テクノロジー企業インポッシブルフーズが「限りなく肉に近い大豆ミート」を開発しています。日本の大手食品メーカーも次々と代替肉を発売しており、カロリーが低いうえに美味しい肉として話題を呼んでいます。いまさら肉を食べない食生活は難しいなら、まずは健康や地球環境を考慮したうえで代替肉を取り入れてみてはいかがでしょうか。
まとめ
日本人の起源ともいわれる縄文時代は諸説あるものの、その歴史は1万3000年ほど前にさかのぼるといわれています。その間日本人の食生活は雑穀や野菜が中心であり、魚を食べることはあっても、肉を食べることはほとんどなかったのです。
人口爆発や地球環境が危惧されるなか、私たちは肉食が本当に必要なのか見つめなおす必要があります。また、肉食の欧米化した食事によって生活習慣病のリスクが上がっているのも事実です。日本古来から続くヴィーガン食をもう一度見つめ、今日からぜひ食卓に菜食中心のメニューを実践していきましょう。
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