マクロビオティックの「陰陽」を理解して料理に活かすには
マクロビオティックで最も大切な3原則のうちの一つ「陰陽」は、ちょっと難しそうに聞こえるかもしれません。しかし、古くから四季の恵みの恩恵を受けて来た日本人にとっては、覚えてしまえばそれほど大変なことではありません。
今回は、マクロビオティックで考える「陰陽」について解説します。
Contents
マクロビオティックの「陰陽」とは
マクロビオティックでは、すべてのものには「陰」と「陽」がある、という考え方をします。これは「マイナス(悪いこと)」と「プラス(良いこと)」という意味ではありません。
陰と陽のバランスが良いと健康を維持できる
「頭寒足熱」という言葉がありますね。頭は冷やしたほうが明晰で物事を冷静に考えることができる、足は温めたほうが血行を良くして身体に良い、という意味で、陰陽でいくと頭は陰、足は陽ということになります。
しかし、実際には逆になっていることが多く、頭はいつも興奮、足は冷えて眠れないと悩む人は少なくありません。つまり、陰陽が逆になると健康に良くない、ということです。
また、別の例としては「自律神経」があります。自律神経には交感神経と副交感神経があり、1日のうちで活性化する時間帯が違います。朝起きた時から交感神経が活性化し、心身を引き締め脳の働きを活発にします。また、夕方6時頃からは副交感神経のほうが優位になり、心身をリラックスさせて眠りへと誘います。交感神経が「陽」、副交感神経が「陰」に当たり、どちらもとても大切なのです。
食材や調味料にも陰陽がある
マクロビオティックでは、これを食材や調味料にも当てはめています。
・陰…身体をリラックスさせるもの、水分が多いもの、冷やすもの
・陽…身体を引き締めるもの、水分が少ないもの、温めるもの
この2つのバランスが取れていると健康でいられる、ということなのです。
人間は恒温動物といわれ、気温の変化に関わらず体温はほぼ一定とされてきました。しかし実際には夏場のほうが0.5℃~1.0℃程度体温が高くなります。すると脳の機能が低下しやすく、身体もだるくなります。そのため、夏の旬のものであるきゅうりやスイカ、麦茶などを摂ると良いとされているのです。
ただ、近年はエアコンによって夏場でも身体が芯から冷えてしまう女性が増えています。胃腸の機能が低下してしまっているため陽の食材を消化できず、陰性のものばかり食べてしまうのです。するとさらに体力がなくなり、体調を崩してしまいます。冷房の効いた部屋でも食欲がないという場合は、身体の陰陽が完全に崩れてしまっていると考えましょう。
マクロビオティックで考える食材・調味料の陰陽
最初にお伝えしておきますが、以下の陰陽は絶対的なものではありません。トータルで見ると陰または陽ということで、比較するものが違えば逆になることもあります。
食材の特徴から見る陰陽
食材・調味料の特徴 | 陰 | 陽 |
環境 | 暑い地域で育つもの | 寒い地域で育つもの |
背の高さ | 背が高いもの | 背が低いもの |
伸び方 | 太陽に向かって伸びるもの | 地下に向かって伸びるもの |
大きさ | 大きいもの | 小さいもの |
形 | 細長いもの | 丸みを帯びているもの |
色 | 白・緑・紫 | 赤・オレンジ・黄色 |
水分量 | 多いもの | 少ないもの |
硬さ | 水っぽく柔らかいもの | 締まっていて硬いもの |
味 | 甘いもの・酸っぱいもの | 苦いもの・塩辛いもの |
成分 | カリウムが多いもの | ナトリウムが多いもの |
乾燥 | 乾燥していないもの | 乾燥しているもの |
熱を加える時間 | 短いもの | 長いもの |
圧力 | かけないもの | かけたもの |
動き | 動かないもの(植物) | 動くもの(動物) |
例えばニンジンには春夏人参(4月~7月)と冬人参(10月~12月)があり、冬人参のほうが身が締まって硬い「陽性」です。しかし春夏人参は冬人参に比べれば「陰性」ですが、ふかふかで紫色の夏野菜ナスに比べれば「陽性」になります。
また、ゴボウは旬が11月~2月で、地下に向かって伸び、硬いので陽性度が強いのですが、アクという陰性の成分も含まれています。しかしアク抜きせずじっくり炒めることでアクが陽性に変化し、陽性度がとても強くなるのです。
ちょっと難しいかもしれませんが、各野菜の旬を知っておけばそれほど悩むことはありません。また、アクは水抜きせず、油で炒めることで陽性が強くなる、ということも覚えておきましょう。
マクロビオティックで使う調味料は陽性
すべての野菜は肉や魚に比べると陰性です。そのため、塩や醤油、味噌などしょっぱい物(=陽性)を調味料に使用することで、陽性度を高めています。
塩
マクロビオティックで推奨するのは精製塩ではなく、自然の力にまかせて作られたものです。
一般的に販売されている精製塩は海水を電気分解して作られたもので、安価で製造できるものの成分の99.5%以上がナトリウムのため、味が尖っています。
精製塩以外を自然塩や天然塩と呼び、海水を煮詰めたもの、天日で海水を蒸発させたもの、岩塩、湖塩などがあります。どれもナトリウム以外のミネラルも含んでいるため、味がまろやかです。
日本の場合、岩塩や湖塩はなく、さらに土地が狭く雨が多いため、天日で海水を蒸発させることもなかなかできません。しかし、天日と釜炊き製法を合わせたものなど、伝統的な製法を守っている国産塩メーカーもわずかながらあります。
なお、海外の岩塩ににがりを混ぜたものもあり、国産塩に比べると安価ですが、身土不二の考え方で考えるとあまり良いとはいえません。
塩はマクロビオティックで最も大切なものなので、できるだけ国産の天然塩を選びましょう。
醤油
本来の醤油の原料は大豆・小麦・塩のみで、すべて国産のものです。最近は丸大豆ではなく加工脱脂大豆や遺伝子組み換えされた大豆、天然塩ではなく精製塩を使っているものが多いのですが、そういったものは熟成期間も短く、アルコールやアミノ酸を添加して味を整えています。
商品を選ぶ時は必ず成分をチェックし、国産の大豆、小麦、天然塩以外のものが配合されていないもの、熟成期間が書かれているものを選びましょう。
味噌
味噌は米や大麦を蒸し、麹菌を加えたものに蒸し煮した大豆と塩を混ぜ、熟成させたものです。
大手メーカーの味噌の多くは輸入材料を使った短期熟成ですが、マクロビオティックでは国産の材料で1年以上熟成したものを推奨しています。また、酒精やアルコール、アミノ酸、ビタミン、保存料などが添加されているものも使いません。
米味噌、麦味噌、豆味噌が代表的な味噌ですが、マクロビオティックでは米味噌は白米ではなく玄米を使用したものを使います。また、最も黒い豆味噌が陽性度が一番強く、次が玄米味噌、最も陰性なのが麦味噌です。
なお、味噌には加熱したものと非加熱のもの(生味噌)があります。味噌は発酵が進み過ぎると風味が落ちるため、市場に出る前に熱や酒精、アルコールを加えて麹菌の働きを止めてしまうのです。
マクロビオティックでは麹菌が生きている生味噌を推奨していますが、発酵し過ぎないよう必ず冷蔵庫で保存しましょう。
料理に甘味料はほとんど使用しない
最近の料理のレシピを見ると、砂糖を使ったものがかなり多くなっています。しかしマクロビでは基本的に砂糖はもちろん、食材を甘くする調味料を使いません。たまにみりんやてんさい糖を使うことはありますが、本来は野菜を炒めるなどして本来の甘みを引き出します。
ただ、ニンジンやゴボウ、玉ねぎなどはじっくり煮ると非常に甘みが出るものの、しゃきっとした歯ごたえがなくなってしまうというデメリットもあります。そのため、中華系料理など歯ごたえを残したい時は、少し甘味料を使うと良いでしょう。
まとめ
マクロビオティックを実践すると肉や魚をほとんど買わなくて良くなりますが、その分食材や調味料を厳選すると、もしかしたら以前よりちょっと予算オーバーということもあるかもしれません。しかし、本物の味に慣れるとはっきり違いがわかるようになる上、体質も徐々に変わって健康へと近づいていきます。まずは身近にあるものから始めてみるのもいいかと思います。
興味がある方は、ぜひこの機会にチャレンジしてみてくださいね。